madecom times
2017年10月1日ブログ
気が付けば、すっかり秋の風情。澄んだ空にはいわし雲が浮かび、夜には虫の声が聞こえてきます。日本には古来から虫の音に聴き入る文化があり、虫の音に想いを重ねた和歌も多く残されていますね。
でも『虫の鳴き声を「声」と認識するのは日本人とポリネシア人だけ』という説があることをご存知でしたか?
東京医科歯科大学の角田忠信教授が1987年1月にキューバの学会に出席した時、周囲の外国人には賑やかな虫の声が耳に入っていないという事実に気付き、研究を始めました。
そもそも人間の脳は、右脳と左脳でそれぞれに得意分野があり、右脳は音楽脳とも呼ばれて感性や感覚を司っています。一方、左脳は言語脳と呼ばれ、言語の理解などの論理的知的な処理を受け持っています。そして角田教授は、日本人とポリネシア人だけが虫の音や雨音、小川のせせらぎなどの自然音を左脳で受け止めるのに対し、その他の多くの民族は右脳で処理しているということをつきとめたというのです。そのため、彼らには虫の声は「雑音」にしか聞こえないのだそうです。
では、なぜ日本人とポリネシア人だけが他の民族と異なる処理をするようになったのでしょうか?
角田教授の研究によると、その理由は、言語の特徴にあるといいます。日本語とポリネシア語は母音を中心としており、他の多くの言語は子音が中心です。日本人とポリネシア人は母音も子音も左脳で処理し、他の言語圏の人は母音を右脳で受け止めてから子音を左脳で処理しているのだそうです。それゆえ、母音に近い自然音である虫の音も言語として左脳で受け止めるようになったということです。また、これは先天的なものではなく、日本人でも外国語を母国語として育てられると西洋型となり、外国人でも日本語を母国語として育つと日本人型になるらしいのです。
実は、この説に反論する論文もいくつか発表されており、本当のところはわかりません。けれども、せっかくこの情緒的な感性を与えられた日本人に生まれたことに感謝し、秋の夜長、テレビを消してスマホもしまって、虫の音に耳を澄ませてみませんか?